背中に書かれた言葉は

 

 高校の友達であるNの話(に多少、いやかなり脚色したもの)。

 Nは良い意味で底抜けの馬鹿であり、極めて社交的。身長は165くらいで少し小柄だが、長年野球に打ち込んでいたため筋骨隆々。二重で目鼻はくっきりしている。その絶妙なバランスというか、全体的なフォルムはどことなく愉快で気持ちが良い。

 運動神経抜群でサッカーやバスケもレギュラー並みに上手い。EXILEのATSUSHIに憧れている。僕の数少ない友人の中では珍しいタイプで、所謂『陽キャ』ってやつ。一時期、市原隼人のモノマネ?にハマっていて、事あるごとに『がむしゃら!!』と叫んでいた。


 そんなNは、量産型陽キャクソ大学生らしく、複数人の女性と関係を持っていた。サークルの後輩や、バイト先の先輩、最寄りのコンビニの店員等、それはもうバラエティに富んでいた。その上で、定期的な風俗店への実態調査も欠かさなかったというのだから、生命体としての強度が高かったのだろうな、と思う。その女性の中の1人、Lさんは大学の先輩。


 NはLさんを彼女のように思っていた。(は?)


 だがしかし、Nは付き合うとか、そうゆうのは望んでいなかった。なんせ、性欲がバケモンなので。Lさんもその類のことは口にせず2人は暗黙の了解の中、ふわふわと曖昧な関係として、幾度となく夜を共に過ごした。先輩や後輩でも、友達でも、まして恋人でもない2人は、生ぬるい暗闇を、取り留めのない会話がやがて静寂に沈むまで、いつまでもいつまでも続けたのであった。


 Lさんに彼氏が出来た。それはあまりにも自然な会話の流れで告げられた。だからこそ、2人で会うのはこれが最後であると確認はしなくても確信した。

 行為を終えたNは悲しく、寂しい気持ちになった。Lさんに背を向け、これまでの日々に思いを馳せていた。

 すると暗闇で、Lさんの暖かい指がNの背に触れた。それはゆっくりと、文字を描いていた。Lさんから、Nへの最後のメッセージだった。Nは取りこぼさないように、背中の感覚を追った。この恋はきっと、ここで終わる。あまりにも静かな、エンドロール。紡がれた、5つの文字。それは


 『 に く べ ん き 』

 

 いや、『肉便器』て!

 Nはガン無視を決め込んだ。そうすることしか、出来なかった。そのまま熟睡をぶちかまし、目が覚めた頃にはLさんは姿を消し、その後2度と会うことはなかった。


 男と女って、むじぃ〜ぜ!!


 


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