トラウマ新人研修備忘録③ 集団?歩行訓練

 研修の大半は、屋外の運動場で行われる。その運動場までが(あえて遠回りするので)、やたらと遠い。片道15~20分くらいだったと思う。それに加えて、山奥ということもあり階段や急勾配の坂道が続く。ずっとバスケをしていた私にとっても、かなりキツかった記憶がある。流石にこれは男女別にコースが分けられた。先に述べたのは男性用のコースで、女性用のコースはこれよりは楽だったはず。ちなみに講師たちは車で移動していた。は?

 みんなで歩いて運動場へ行くだけだと、ハイキング気分でいれるのだが、残念ながらそうは問屋が下さない。歩行訓練さながら、1人ずつ出発するのだ。こんな感じで。


N氏:それでは最初に出発する者、希望者挙手!!

一同:はい!!

N氏:では、一番やる気があふれている富美山君!

富美山:はい!!(所属部署)の富美山です!行ってまいります!!

一同:行ってらっしゃい!!


 出発。1人、黙々と歩く。前後との距離は等間隔を求められ、合流は許されない。必然的に雑談など出来はしない。ただただ、前に追いつかぬよう、後ろに追いつかれぬよう、一定のペースで機械的に移動する。まさに社畜のムーブ。つまらん人間のムーブそのものだ。創造性の欠片もない、歩行という単純作業。

 今思えば滞在の間、トイレ以外で1人きりになるのはこの時だけだったかもしれない。3人部屋で、風呂は大浴場で一斉に入っていた。一人きりになると、どうしてもマイナスの感情が溢れ、より一層辛さが増す。そして苦行の果て、到着すると、こうだ。


富美山:(所属部署)の富美山です!只今、到着しました!!

一同:お帰りなさい!!


 は?めちゃくちゃキモくない?キモすぎて、私は心の中でずっと笑っていた。それは同期も同じで、すぐにネタとして頂いた。ことあるごとに「行ってまいります/行ってらっしゃい」と「到着しました/お帰りなさい」のコールアンドレスポンスを乱用し、ゲラゲラ笑った。トイレに行く時、自動販売機に行く時、ただ部屋の端から端へ移動する時も。そうして私たちは、折れてしまいそうな心を、必死で支え合っていたのだろう。

 でも、多分この歩行訓練の時だろうなぁ、同期のS君がとんずら決め込んだのは、、、。

 

続く


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