富美山バスケ部物語 高校編#4  選抜選手と憧れの先輩

  高校バスケ部にとっての、ひとつのブランド。それは選抜に選ばれることだ。経験上、というか実際、マジで上手いなぁと思うし、選抜ってだけでカッコいい。

 選抜に選ばれるには、合同練習に参加する必要がある。各校から腕自慢の選手が集まって練習。そんで2.3日くらいかけて選抜するって訳だ。多分、宇部市と山陽小野田市でまず選抜を決めて、その後そこからさらに試合(宇部・小野田選抜vs下関選抜とか?)をして山口県全体の選抜を決めるような流れだったと思う。


 僕の高校では1つ上の濱部さん、2つ上の達郎さんが宇部・小野田の選抜に選ばれていた。どちらも化け物だが、達郎さんは当たり前のように県選抜として国体に出場。ウマ過ぎて特に言うこと無いです。そして普通に怖かったです。今回のメインはもう一人の濱部さん。


 濱部さんは兎に角バスケよりゲーム(特にモンスターハンター)と遊戯王カードをこよなく愛する男で、練習をサボることはしょっちゅう。歯が痛いとかで1ヶ月くらい来なかったこともある。勿論、仮病。練習に参加したらしたで、全く持って真面目に取り組まず、終始ヘラヘラしていた。

 しかし、いざ公式戦となるともう、チーム最強。クソ速いドリブル、どこからでも入るシュートは、ハマれば相手が強豪校であっても誰も止められない。そしてなんなら次長課長の井上に似たイケメン。いるんですよね、こんな人って。

 でもう、そんなん、1番かっけぇやつでしょ!僕はめちゃくちゃ憧れた。憧れないはずがないでしょって話でしょ。憧れて憧れて、一度練習をサボってみたが、翌日キャプテンに平手打ちを喰らって『あ、ダメだなこれ』と即改心した。


 濱部さんが引退した時、アシックスのバスケットシューズを僕に譲って下さり、すごく嬉しかった。高校は勿論、大学でもずっとそのシューズを愛用していたなぁ。

 そして、なんと言っても濱部さんは宇部・小野田の選抜に選ばれたものの、すぐにボイコット。そんなやつ、おる??半ば無理やり参加させられていたってのもあるが、そんな所もつくづく僕の琴線に触れる大先輩であった。


 最後に会ったのは、大学2年の夏だったか、バスケ部の数人で焼肉に連れて行って頂いた時かな。とすると、もう10年も経つのか。帰り道、濱部さんの運転するカルディナは、深夜の国道でバキバキにドリフトを決めていた。後にも先にも、高速でスピンする車に乗ったのはこれっきり。今頃、どこで何をしているのだろうか。同じような運転を続けているとしたら、ただただ、生存だけを祈っています。

 


 自分の代ではキャプテンの浩介という男が1番上手かった。浩介はまぁ選ばれるんだろうな、なんて思っていたものの、残念ながら選ばれることはなかった。たまたま(実力のうちかもしれないが)、合同練習で全くと言っていい程実力を発揮できなかったらしい。

 めちゃくちゃ悔しがってたなぁ。デコログにその悔しさを吐露していたし、何も分かってないような奴がコメントで励ましてたなぁ。


 さて僕はと言えば、副キャプテンでありながら、そもそも合同練習に参加すらしなかった。到底、選ばれるような実力ではないと諦めていたと言えばそれまでだが、少し違う。僕はなにより『選ばれなかった人』になることを恐れ、逃げたのだ。

 それくらいなら『もしかしたら選抜に選ばれていたかもしれない人』であり続けることを選んだ。なんなら自分から後輩とか部外の友達に『まぁ僕は合同練習行ってないからね。ほら、選ばれでもしたら怠いやん?』とか言っていた。そうゆう男なんよなぁ、結局。


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