DOGRUN FANCLUB/ EMOTIONAL PACKAGE 配信開始によせて

 「それでね!サブスクにあるから、聞いてみてよ!」

 エモ/インディーロック好きな蘭ちゃんが、僕に言った。何やら彼女一押しのDOGRUN FANCLUBとか言う天才集団が新しいシングルをリリースしたらしい。蘭ちゃんはお気に入りのバンドを見つけたら、全てのライブに行くことは勿論、SNSで頻繁に宣伝、物販をまとめ買いし、海外のヒップホップよろしく肩に背負ったバカでかいラジカセで当該バンドの音源をズンズン鳴らしながら街を徘徊し、道行く人々に片っ端からプレゼンをして回る習慣をもつ、バンドマンの強い見方だ。そんな蘭ちゃんを奇異な目で見る人もいたが、僕はそうは思わなかった。根っからの陰キャである僕に声をかけてくれるのは彼女だけだったし、そんな我が道を行く強いマインドを宿した彼女のことが僕は好きだった。

 「よし、僕もDOGRUN FANCLUBを聞いてみよう」

 そう心に決めた僕は、クラスのヤンキーによってハンドルが垂直に曲げられたママチャリに跨がり、TSUTAYAへと向かった。しかし変だ。どこを探しても見つからない。いや、そんな筈がない、、TSUTAYAに無いCDなんて、、そんなの、、あり得ない!と、パニックになりかけた僕は、蘭ちゃんの言葉を思い出した。

 「サブスクにあるから!」

 サブスク??そうか、サブスクと言うところにそれはあるのだ。インターネット大好きな僕はすぐに検索。しかしその検索結果に愕然とした。それはつまりApple MusicだとかSpotifyのことを指しており、僕の扱っているwindows XP、ポータブルMDプレーヤー、スライドケータイでは聞くことが出来ないことが分かった。圧倒的なハイテクノロジーを突きつけられ、途方に暮れた僕はしばらく身動きができずにいた。そんな僕に、人語を操る子犬の精霊「ジュンピ」が語りかける。

 「ディバイスが無いならさ、精神を肉体から切り離し、幽体で電脳世界へ入り込んでサブスクまでたどり着けばこっちのモンでしょ」

 そ、その手があったかぁ〜!物心ついた時からずっと側にいる相棒「ジュンピ」は、いつだって僕を導いてくれる。そうと決まれば話は早い。さぁ、電脳世界へのダイブだ。未だみぬサブスクへの旅立ちだ。無数の電極を巻きつけたローションまみれの体に、フルマックスの電流が駆け回る。僕の肉体が焦げ付きながらビタンビタン跳ね上がる。もう少し、、もう少しだ!と、ブレーカーが落ちたその瞬間、僕のエモーショナルは見事に電脳世界へとパッケージされたのであった。

 かっけぇシングルの配信、おめでとうございます。なにより、あずちゃんの声がめちゃ良いね!

t.frtm a.k.a 富美山混沌核




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